≪法人と経営者の節税対策について≫
会社の節税対策は経営者なら誰でも頭を痛めるものだと思います。出来るだけ少なくしたいと・・・。確かに今の国に対して税金を納めても適正に使われているとは到底思えないため、もったいないという思いが強いと思います。しかし、日本においては、法律に従って納税することは国民の義務となっています(世界の中には税金を納める必要のない国もありますが・・・)。経営者の皆さんもここは割り切って納税意識を持っていただきたいと思います。とはいっても、無駄な税金を納める必要はありませんので、様々な節税の方法を解説しています。節税効果の高い方法は決算日前にしか行えないことが多いので、月次決算をしっかり行って今期利益がどのくらい出るかを決算日前までにある程度把握する必要があります。その水準により節税方法を選択していくのが良いと思います。決算日を過ぎてしまうと、行えることが限られあまり効果がありません。その場合、脱税に手を染めてしまう可能性があります。
私の考えですが、売上高の3%の税金は会社運営上の必要経費と思っています。税金を納めるということは利益が出ていることと表裏一体であり、利益を出すことにより会社は体力が付いてきます。継続的にこの3%の税金を納める会社は永続的に発展していく会社と考えていますので、ぜひ3%の税金を納める会社になってください。
新事業年度開始日より2ヶ月以内に行っておきたいこと
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■ 役員報酬の額の決定
役員報酬は株主総会の決議事項のため、通常、決算日から2ヶ月以内におこなわれる定時株主総会時で決定されます。その時に新事業年度の利益を予測し、役員報酬の額を決定します。また同時に家族を役員に就任させ役員報酬を支払うことは所得を分散することになり、かなりの減税につながります。
(注)役員報酬の金額は、実際の仕事内容や同業種の状況と比較して特に過大となる場合は、損金として認められませんので注意が必要です。名目だけ役員にして過大な役員報酬を支払うことは税務上認められないということです。また、役員報酬は一度決定した金額は特別な状況の変化がない限り1年間同額でなければなりません。特別な状況の変化とは、@明らかな業績悪化による報酬の減額A平取締役から代表取締役社長など大幅な職制の変化など。
会社に退職金制度がある場合、退職時に一括して退職金を支払うと資金的にも利益的にも負担が大きくなります。そのために、中小企業退職金共済への加入をお勧めします。
メリット:毎月納付する必要がありますが、全額経費として認められます。外部積立のため退職金を確保しておくことが可能となります。
デメリット:資金が外部に流出します。また、本人にしか給付がされませんので、懲戒解雇の場合でも本人に支給か、それとも、放棄しか選択がありません。会社に給付される方法として、傷害保険等の活用がありますが、あくまで保険のため支払った保険料以上の解約返戻金はありません。
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ある程度安定的に利益が出る会社は加入をお勧めしております。通常、自己都合退職で支給される退職金がカバーされるように掛け金を設定します。(一律に掛け金を設定することは無駄であります)
決算日までに行っておきたいこと
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ポイント:下記の内容は支出が伴いますが、不必要なものや無駄なものを購入することによって、税額を少なくしても意味がありません。必ず必要な事項についてのみ行うようにして下さい。その結果、税額が発生するということは事業が順調であることの裏付けとなります。
■ 修繕等の実施
建物や機械の修繕が必要な場合、決算日前までに完了しましょう。建物の修繕について、屋根の防水工事等、通常行われる修繕は現状の品質を明らかに高めない程度であれば、金額の多寡によらず経費として認められます。機械についても、明らかに機能を高める改良でなければ、経費として認められます。増築や明らかに機能アップが認められるものは資本的支出のため、資産計上する必要があります。
従業員に対する研修を充実させましょう。OJTでかなりの研修をすることは可能ですが、外部研修を利用することは、OJTでは違う視点での研修となりますので積極的に活用しましょう。ただ、外部研修を利用した場合、研修内容についての報告を求めるようにしないと、受けただけで終わってしまうこともありますので、その点注意が必要です。
■ 30万円未満の備品の購入
通常、10万円以上で1年以上使用できるのものは資産計上する必要がありますが、中小企業の特例で、10万円以上30万円未満の資産の合計額が、300万円未満までについて、全額費用処理できます。決算日までにパソコン等30万円未満の必要な備品を購入するのも節税となります。
■ 社内旅行の実施
総従業員の過半数が参加し、4泊5日までの旅行で、社会通念上相当と認められる範囲であれば全額経費として認められます。ただし、不参加者への現金支給や、役員のみの参加、特定の従業員のみの参加の場合は、賞与として認定されます。
■ 決算賞与の支給
次決算において、例年以上の利益が見込める場合、従業員への感謝の気持ちをお金に表す意味で、決算賞与を支給するのもいいことであります。ただ、毎年支給していると、従業員は当たり前という気持ち(支給日よりもかなり前段階で決算賞与を当てにしてしまっています)になってしまい、支給できなかったときに、従業員の不満が表れる可能性もあるので、支給時はよく説明して支給するようにして下さい。
■ 倒産防止共済への加入
倒産防止共済は得意先が倒産した場合、掛け金の10倍まで資金の融資をしてもらえる制度であります。主目的は倒産時の融資ですが、掛け金が全額費用となるため、節税目的で倒産防止共済へ加入するのも手であります。月額20万円の掛け金のため、12ヶ月前納を行えば、240万円決算日までに支出すれば、240万円費用とすることができます。掛け金の上限は800万円であり、40か月以上経過すれば、解約して800万円戻してもらえます。戻した場合は雑収入となりますので、退職金等の支出があるときに解約するとよいと思います。
■ 生命保険の加入
節税目的で生命保険に加入している会社が多いですが、過度に加入している場合が多く見受けられます(おそらく外交員やお付合いでの加入が多いのでしょう)。一度見直しを行うのがよいと思います。私がよいと思う保険は、長期平準保険であります。若い社長や2代目に対して、5000万円〜1億円の保険金を掛け、いざというときの保険のほかに、社長や2代目の退職金作りがメインと思っています。掛け金の2分の1は経費となり、解約返戻金も単純で100%を超えるものもありますので、検討するに値すると思います。
■ 賞与未払金計上の検討
決算日までに支給者全員に通知を行い、決算日以降1ヶ月以内に支給する場合、決算において全額賞与未払金の計上が認められます。税務調査等を意識して、通知については、従業員の承諾書をもらっておくとよいでしょう。
下記の内容は支出を伴わない事項ですが、会社資産の消滅を意味する事項ですので、本当に不要となった場合に実行するようにして下さい。
■ 不要な固定資産の除却や売却の実施
不要な固定資産については、場所も取っていることから処分を検討しましょう。売却できるものは決算日までに売却を行い、売却できないものは、スクラップとして引き取ってもらいましょう。現在、スクラップ価値も上昇していますので、間違っても社長のポケットに入れないように注意してください(最近の税務調査でよく見ています)。スクラップ処分したことを証明する書類や写真等を必ず保管しておいてください。
■ 陳腐化した材料・商品等の廃棄処分
販売できない材料や商品等については、決算日までに廃棄処分を検討しましょう。廃棄処分する場合、廃棄したことを証明する書類を必ず保管しておいてください。
得意先の倒産等で不良債権が残っている場合、資産整理等で配当金の見込み場ある場合は、最終配当まで50%の貸倒引当金の計上のままですが、先方の財務内容から明らかに配当金が見込めない場合(銀行等の優先債権が資産よりも多い場合)、決算日までに管財人に債権放棄の通知書を内容証明で出しましょう。それによって、不良債権全額が貸倒損失として費用処理できます。
決算日後に行えること
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ポイント:もれなく適正な経費を計上しましょう
■ 〆後の仕入等がもれなく計上されていますか?
会社の仕入等の締め日が、決算日と一致していない場合は、締め日の翌日から決算日までに納品されたものが適正に計上されていることを確認します。
■ 〆後の給料がもれなく計上されていますか?
給料の締め日が決算日と一致していない場合は、締め日の翌日から決算日までの期間に対応する給料が計上されていることを確認します。通常、1ヶ月分を日数で案分する方法で未払計上を行います。
(注)日数按分を行う場合、役員報酬の部分については日数按分は適用できません。役員報酬は雇用契約ではなく委託契約のため日数按分という概念が存在しないからです。
■ 公共料金等、カード決済などもれなく計上されていますか?
公共料金等やカード決済は実際の利用月と引落し月に2ヶ月ぐらいのズレが生じる可能性がありますので、決算日までの利用分が適正に計上されていることを確認します。請求書に書かれている請求月と実際の利用月が異なっていることがありますので、実際の明細で確認してください。
■ 固定資産税の未払計上が行われていますか?
固定資産税の支払いは通常4期に分けて支払いますが、4期分すべて計上されていることを確認します。決算日が12月末から3月末までの会社では適用はありません。通常4月に賦課決定されますのでその時点で未払計上が可能となります。納期は4月〜12月で4分割されますので、決算日において未納部分について未払計上が可能となります。
■ 社会保険料の未払計上が行われていますか?
通常、社会保険料の会社負担分は未払計上が可能となります。月末に引落される社会保険料は前月分のため、決算月の分は翌月引落しとなりますので、未払計上が可能であります。また、月末が休日の場合は、翌月初めの引落しとなりますので、引落し金額が未払計上されていることを確認します。
■ 固定資産除却損が適正に計上されていますか?
廃棄処分した固定資産について除却損が計上されていることを確認します。
■ 敷金礼金等で返還されないものは、適正に費用処理されていますか?
返還されない敷金等は5年(更新料の支払いがある場合は賃貸期間)で均等償却されていることを確認します。また、建設協力金等で数年後家賃に充当される契約の場合、適正に家賃として経費処理されていることを確認します。
ポイント:税務メリットのある税法を積極的に、かつ、適正に活用しましょう
■ 一定の機械等を購入した場合税額控除又は割増償却の適用を受けていますか?
中小企業者(資本金等1億円以下)が平成24年3月31日までに、160万円以上の機械等、120万以上の情報機器等、ソフトウェアの総購入額70万円以上を購入した場合、資本金等3000万円以下の法人は、7%の税額控除(法人税の20%が上限、1年間繰越し可能)を利用することが可能であり、資本金等3000万円超の場合は30%の割増償却のみ選択できます。
割増償却は償却額を前倒しで計上できるだけで、償却額の総額は同じため減税額はゼロということになりますので、資本金3000万円以下の法人は、7%の税額控除を利用しましょう。
■ 教育訓練等を行っている場合、税額控除の適用を受けていますか?
平成23年3月31日までに開始する事業年度において、総労務費に対する教育訓練費用の割合が0.15%以上の場合、教育訓練費用の8%〜12%の金額が税額控除(法人税額の20%が上限)となります。
■ 飲食の接待交際費について一人当たり5,000円未満のものを区分していますか?
飲食の接待交際費について一人当たり5,000円未満の場合、税務上、交際費に含まれませんので、全額経費として認められることになります。交際費は現状、600万円までは10%が経費として認められず、600万円を超えた部分は全額費用として認められません。
一人当たり5,000円未満の交際費についての要件は、@飲食に関する支出であるA会社外部の人が必ず同席するB帳簿に先方の会社名と氏名を明記し総人数が分かるようにする
■ 減価償却費が適正に計算されていますか?
通常、10万円以上で1年以上使用できるのものは資産計上する必要がありますが、中小企業の特例で、平成24年3月31日までに事業の用に供した場合、10万円以上30万円未満の資産の合計額が、300万円未満までについて、全額費用処理できます。
経営者の節税対策
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■ 小規模企業共済の加入
経営者本人の退職金作りのためで、毎月一定額(上限7万円)を掛け金として拠出するものであります。掛け金は、全額本人の所得から控除されるため、所得税及び住民税が減税となります。65歳以上で15年以上掛けている場合、共済金Bが支給されます(死亡・廃業等の共済金Aよりは少ない)。支給額は退職所得として課税されるため、現状ではかなり低い税額となります。
加入資格が、常時使用する従業員数20名以下(商業とサービス業は5名以下)の場合の役員のみであります。設立してすぐの加入をお勧めします。
■ 確定拠出型年金の加入
企業年金基金が存在しない企業において、毎月一定額(上限2万3千円)を掛け金として拠出するものであります。掛け金は全額本人の所得から控除されるため、所得税と住民税が減税となります。運用は自分で行い、運用結果によって将来の年金の支給額は変動します。
■ 自社株の贈与
毎年、自社株について相続税非課税枠である110万円までの株式を子供や孫に贈与を行います。
注)作成日現在の法令等に基づいて作成しております。
適用に当たっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。