誰でも一度や二度、独立開業を考えるのではないでしょうか。毎日同じ電車に乗り、同じ仕事を淡々と行い、また、上下関係などに心労を費やし、最後に自分の給料明細を見ると、無性に独立したく思いませんか?自分も監査法人勤務時代は早く独立することを考えて行動をしていました。ただ、実際に独立開業される方はほんの一握りの人だと思います。様々なリスクを負うことがかなり大変であることは言うまでもありません。また、実際に独立しようと決心してもどのように行動を起こせばよいか分からない人が多いと思います。そんな方のために、独立開業に関する考え方と税務署に対する書類等をまとめましたので参考にして下さい。独立に伴うリスクを甘受出来る心がけができた方は、行動に移しましょう。
★独立開業の方法について
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個人事業主として開業するのか、株式会社を設立して開業するのか大きく分けて2通りのやり方があります。それぞれメリットとデメリットがありますので、それぞれを勘案して選択してください。
個人事業主
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株式会社設立
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メリット
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■ 一般的に社会的信用がある |
デメリット
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■ 法人と比較して社会的信用はない |
■ ある程度時間が必要となる |
それぞれのメリット・デメリットから、まったくのゼロから独立する場合は個人事業主として開業し、ある程度事業が安定してから法人成りする方法が一般的です。独立時にある程度仕事の目処が付いており、資金的にも余裕がある場合は、いきなり株式会社を設立しても良いと思われます。マンション等の不動産賃貸業を始められる方は株式会社を設立して、事業として不動産賃貸業を行う方が良い場合が多いです。それぞれケースバイケースなので、独立開業をお考えの方はご相談ください。
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★個人事業主の開業について
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個人事業主の開業はいつでも可能です。許可が必要な業種はその許可を取得する必要がありますが、許可を必要としない場合は、特に費用や時間は必要ありません。ここで忘れがちなのが、税務署に対する届出書です。開業届出書等を提出せずに、さらに税務申告等も行わずに事業を行っている方が中に見えるようですが、数年後の税務調査等で多額の税金を支払う可能性があります。開業時に届出書を提出し、毎年最大限の税務メリットを享受し適正に申告することが一番税金を少なくする方法だと思います。
税務署提出書類一覧
届出書名
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必要性
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内容
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提出期限
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個人事業の
開廃業等届出書 |
必ず提出
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開業したことを税務署に知らせます | 開業より1ヶ月以内 |
所得税の青色申告
承認申請書 |
必ず提出
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税務メリットを享受するために必要 | 開業より2ヶ月以内 |
青色事業専従者給与
に関する届出書 |
任意
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家族等に給料を支払う 場合は必要 | 開業より2ヶ月以内 |
給与支払事務所等
の開設届出書 |
任意
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従業員を雇用する場合は必要 | 雇用から1ヶ月以内 |
源泉所得税の納期の
特例の承認に関する 申請書 |
任意
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源泉税の納付を6ヶ月毎にする場合必要 注)従業員10名未満の場合 |
任意 |
所得税の減価償却
資産の償却方法の 届出書 |
任意
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定率法を採用する場合は必要 注)建物は定額法のみです |
最初の申告期限まで |
注)提出期限はあくまで新規開業の場合における提出期限となります
個人事業主として開業後は、入出金等はできるだけ通帳を通すようにし、請求書や領収書を保存しましょう。現金を扱う場合は現金出納帳を付けるのが良いと思います。従業員を雇用した場合は、源泉税を徴収し、翌月10日(特例の場合は1月と7月)に納付します。また、12月末において、1年分の給料を合計して年末調整を行う必要があります。個人事業主としての事業年度は1月1日から12月31日までであり、所得税の確定申告期限は翌年3月15日となります。
確定申告等税理士に依頼するかどうかですが、従業員を雇用せず売上高も700万円ぐらいまででしたら、ご自分で行い、従業員を雇用したり、売上高が1000万円を超えるようになってきて初めて税理士に依頼するのが良いと思います。それまでは、地域の商工会や税務署、税理士会等に相談できますので最大限活用し経費を削減することが大事です。経費削減以上に、事業主の経理に対する最低限の知識が得られますので、最低1年でもご自分でやられることは後々必ず役に立ちます。
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★会社設立による開業について
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独立後新規に会社設立を考えている方、個人事業主から法人成りを考えている方、すぐにご連絡ください。会社設立だけなら司法書士の先生にお願いすれば、通常3週間ぐらいで会社設立可能です。しかし、会社設立日が明確となり、税務署提出書類も期限がきっちり決められてしまいますので、1日でも期限が過ぎてしまうと、折角の税務メリットが失われてしまう可能性があります。また、消費税等についても資本金基準で免税業者かどうかの判定をしますので、その点も注意する必要があります。本来2年間消費税等が免税にもかかわらず、資本金基準で設立年度から消費税等課税業者となってしまうことがあります。
■ Step1
決定事項
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説明
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会社名(商号)
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株式会社 は必ず入れる必要があります。また、アルファベットでもOKです。 |
本店所在地
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どこでも可能ですが、実際に事業を行う場所が良いです。よく自宅を本店所在地する場合がありますが、事業自体自宅であれば問題ありませんが、別の市町村に事業所がありますと、法人住民税の均等割額を2市町村分支払う必要があります。 |
取締役の氏名
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最低1人で設立可能です。代表取締役となる人は、生年月日と住所が必要となります。 |
資本金の金額
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いくらでもOKですが、1千万円未満の方が税務上有利となる場合が多いです。 |
定款の目的
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今行っている業務及び将来行う予定の業務を列挙します。 |
会社設立日
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登記の申請日が会社設立日となりますので、2〜3日列挙していただき司法書士の先生の都合で決定します。 細かい話ですが、1日は設立日から外します。 外すことにより、法人住民税の均等割りの12分の1少なく済みます。 |
決算日
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いつでもOKですが、消費税等免税業者の場合は、基本的には会社設立日の属する月の前月末日を決算日としております。売上予測等を勘案して最も節税効果の高い決算日を選択します。 |
また、会社の実印をご用意します。印鑑は縦横1cm超、3cm以下のものであれば何でもOKです。
※丸印でなくても可能です
■ Step2
上記内容が決定できましたら、私の方で定款を作成します。定款には発起人全員の実印と印鑑証明書が必要となります。定款は公証人の認証を受けます。
■ Step3
資本金の扱いについて、以前は銀行の保管証明書の発行が必要でしたが、現在は簡略化され、代表者個人の通帳に各株主からの振込で、それぞれの名前が印字されている部分の通帳のコピーで良くなりました。
■ Step4
会社設立登記には、代表者の実印と印鑑証明書、会社印が必要となります。申請書類に印鑑等を押印のうえ、司法書士の先生に法務局へ行っていただき登記申請を行っていただきます。約1週間で会社謄本が出来上がります。
会社設立の登記費用は、登録免許税15万円、定款認証代9万円、司法書士報酬約10万円の合計34万円前後となります。
会社設立が無事出来上がりましたら、税務署へ各種届出書等を提出する必要があります。
税務署提出書類一覧
届出書名
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必要性
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内容
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提出期限
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法人設立届出書
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必ず提出
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設立したことを税務署に知らせる | 設立より2ヶ月以内 |
青色申告の
承認申請書 |
必ず提出
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税務メリットを享受するため に必要 |
設立より3ヶ月経過の日と 最初の決算日のいずれか早い日 |
給与支払事務所等の
開設届出書 |
任意
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従業員を雇用する場合は提出 | 雇用の日から1ヶ月以内 |
源泉所得税の納期の
特例の承認に関する 申請書 |
任意
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源泉税の納付を6ヶ月毎にする 場合提出 |
任意 |
注)提出期限はあくまで法人設立の場合における提出期限となります
税務署以外に、本店所在地の県税事務所や市町村にも法人設立報告書等を提出する必要があります。
用紙は、それぞれ県税事務所、市町村にて配布していますのでご利用ください。
会社設立後は、現金出納帳と預金出納帳は最低限記帳します。請求書や領収書も整理し保存します。売上高や仕入高については集計表を作成します。従業員を雇用した場合は、源泉税を徴収し、翌月10日(特例の場合は1月と7月)に納付します。また、12月末において、1年分の給料を合計して年末調整を行う必要があります。法人税の確定申告書の提出期限は決算日より2ヶ月以内です。
税理士に依頼するかどうかですが法人の場合は必ず顧問契約をすることをお勧めします。法人の申告業務は個人と比較して比べものにならないぐらい複雑となっていますので、あえて自分でやろうとして時間を費やすのであれば、その分事業に注力したほうが効率的となります。また、通常の税理士は税務申告だけが仕事ではなく、コンサルタント業務を行うことも業務の一環ですので様々なアドバイスをしてもらえると思います。
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注)作成日現在の法令等に基づいて作成しております。
適用に当たっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください